客を増やさないという経営戦略
- 坂本圭

- 6月22日
- 読了時間: 5分
更新日:6月23日
坂本カレー研究所が閉店してから約7年が経った。ありがたいことに当時は行列ができていたまま終わりを迎えたのだけれども、今思えば当時のマーケティングスキルは自分で説明できない状態だった。

今、マーケターとして当時の状況を確実に言語化できる。時代は変わったけれども、人間の欲求は変わらない。食欲が消えない限り、小さな飲食店は存続し続けると思う。
僕が売っていたものはカレーではない
→だからライバルがいなかった。
まず花屋さんに用事がある人は花が好きだから行ってるわけではない。大体の用事はこれだ。「奥さんと喧嘩したから仲直りしたい」「知り合いが店を出したからオープンのお祝いの花を送りたい」「友人が入院したので花を持っていきたい」
このニーズに対して多くの方が勘違いしたコンテンツを配信してることが多い。花が必要だから来てるのに「花言葉はこれです」「5月の花はこれです」お客様からしてみれば欲しい情報ではない。
それより花屋が提供するべきものは「かしこまりました。奥様のご年齢、ご結婚年数はどのくらいでしょうか?はい、わかりました。ありがとうございます。ご予算5,000円以内であれば、今の季節だとこの花の組み合わせが奥様喜ばれると思いますよ」
今、顧客が欲しいものを確実に提供する。これこそプロフェッショナルだと思う。
じゃあ僕は何を売っていたのか、答えは「非日常」ウイスキーが並んでいるバーでカレーを食べると言うありえない組み合わせの体験を売っていたのだ。それもわざわざ遠くから尋ねてくると、不思議と旅行になるものだ。
僕よりおいしいカレーを作るお店をたくさんあって、相模原で言えばまぼろしさん。正直、都内に行けばもっとゴロゴロいるわけで。
「そんなことないですよ!坂本さんのカレー1番おいしいですよ!」ありがとうございます。言われて嬉しかったですが、僕もプロなので自分の舌で確かめてわかります。僕よりカレー料理が上手い人なんて星の数ほどいるんです。
ただ、「選ばれる理由」は設計することができると言うことです。これが弱者が強者に勝つ唯一の方法。
冷静に見る。もっと冷静に…
マーケターで有名な盛岡毅さんが言っていたことで「弱みが強みに変わった瞬間を見たことがない」と数学の林先生の番組で言い放っていましたが、僕はそれは違うと思います。
弱さが強さであり、コンプレックスが可愛らしさであり、何もないと言う事は→全て持っていると言う事。
弱みが強みに変わる瞬間はある。到底勝てないと認めること。戦わないと決めること。相手がライオンで自分がシマウマだと思ったら全速力で逃げ切ると決意すること。
冷静に見た弱み、それは「カレー店なんだかバーなんだかよくわからない店」だと言うこと。ランチは「あ、夜は飲み屋なのね。」と馬鹿にしたような口調の客ばかりで溢れかえっていた。完全にターゲットを絞りきれていない僕のミスだった。
まぁいろいろありましたが、そこから僕はカレーの値段を2倍にして昼から飲みに来る客を締め出し、夜は禁煙にしてカクテルの値段を3倍にした。客層を変えるなら値段を上げるのが1番手っ取り早い。悪口だけ言い残して一切来なくなった。誰も来ない店だけが残ったけど、再設計するにはすごくやりやすかったように思える。当時は怖かったですけどね。
だから僕が売っていたものはカレーではない。非日常の体験を売ることに辿り着いたのである。
満ちていく前は引いていく
さーっとお客さんが来なくなって3カ月間。売り上げはなくなったけれども、時間だけはたっぷりあった。考える時間と自己投資をする時間。これ以上幸せな事はあるか?
ある日、Fさんと言う方が「禁煙にしてくれてありがとうございます。正直、料理も空間もいいのに大騒ぎする人がいるときに来たら今日はハズレだなって思っちゃってました。」この発言に成功の種があるんじゃないかとなんとなく思っていました。
今思えばこのFさんをロイヤルカスタマーに設定して、Fさんと同じような方でカウンターを埋めていけばいいんじゃないか?と突破口を見出したんです。
ある日、死んでも客を増やさないと決めた。N1分析の話を良くしますが、それだけ大切で根っこの部分ということになります。たった1人に絞る勇気と言うものが必要です。必ず新しいプロダクトを企画したらターゲットは1人です。
1人に刺されないのであれば、その1人が違うのでやり直しです。たやすく成功できるわけではないので、何回もトライ&エラーを重ねて解像度を上げていく。この作業は無言で自分と向き合う作業。ここでバタバタと他の人が辞めていく姿を想像してみて欲しい。「あと1日だけ続けてみよう」と思えるはず。
世の中は全て逆だった
当時の僕が思う飲食店の成功法則。全部が逆だったと言うと、逆をやればうまくいくと言う事実は行動したからこそ手に入れられた。しかも行動してすぐには手に入れられなかった。忍耐力と精神力、愛したものとの決別、執着を手放すこと。今思えば狂気だった気がする。
何が僕をそこまで変えたのか?シンプルに言うとダサイ生き方をしたくなかっただけである。長女が生まれて3ヶ月の時に1,400万の詐欺に遭い、アル中になり、赤字店舗のまま人生を終えるなんて、誰の記憶にも残らない惨めな人生だと感じた。だからそこから考え方を変えなければならなかった。まぁいろいろここでは書けないこともたくさんあるので、よくセミナーの中で詳しく話しています。
逆張りする勇気。
当時を思い出しながら今も意思決定をしているつもりです。
坂本圭


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